重要なこと

小さな人はずっと考えていた
空を仰ぎ  宇宙を見据え
その瞳の奥に還る場所があることを
まだ知らずに
青にめまいを覚え
やがて空を見上げることをやめた
太陽がまぶしすぎたから
道を間違えるのが怖かったから
踵を踏みしめて歩き続けた
ずっと声が聞こえていた
なれます
できます
未来に希望を持って
自分の価値を小さくしないで
怖いよね  でも  やってごらん
怖いよね  その気持ちは  間違ってない
銀河の母と別れ
私は一人の女(ひと)を選んだ
この地球(ほし)の母として
その人しかいなかった
血肉を得る代わりに
すべてを忘れた
私は私へ戻る時間を必要とした
知らない道を歩いているようでも
それは還る道だった
光はいつも瞳の奥にあった小さな人よ  迎えにきた
顔を上げて
今日の空を見て
宇宙は私にこう言いました
あなたを愛している
あなたを愛するものは
ここにいる
今  空を見て空を見て
そして知るでしょう
自分がどこから来たのかを
でもそれは
重要じゃない

6000日目の少女

剥がれたつま先の皮
ほどいた糸で縫いなおす
元通りではないにせよ
隙間がないならそれで
力の限り踏み込んで
魔法の靴でジャンプする
リネンを被って
楽園を目指した
どくんどくん  ざわつく
落胆と充足感が
意識の中で分裂してゆく
頬に張り付く土
痺れる体躯をまとい
後頭部で地面を掘ってみると
めまいのする青空があった
あきれた叔母さんの母は
かつて空を歩いたのだという
立派な魔法使いだったらしい
書斎から出てきたおばさんは
死ぬ前にやるべきことをメモしていた
庭のつるばら  笑いっぱなしのまま
鳥は歌う  風を集めて
楽園に降ってきた少女
滑らかな白い石の天使
誰かが私を呼ぶ
人間の言葉ではなくて
明日は不燃の日だ
唐突に思い出される
泡がつまったについて
やわく脈打っている
中を見たことはない
今も知らない
見ることでしか
決まらない未来のかたち
じゃあ  行ってくるね

魂の旅

目醒めたあとに、使命を知りました
記憶を辿ると、最後はいつも
みんな 手を振っていた
別れと始まりをつなぎ合わせて
魂は、旅を続けてきた
耳を澄ませる
彼らの声が聞こえてくる
出ていくときは
ほんとうに大事なもんだけ持ってくんだ
荷は軽いほうが
歩きやすい
誰だってきっとね
最初から幸せなのよ
ただ、
気づくのが難しいの
期待に応えなくてもいいじゃない
生き延びるために
演じてきたその姿じゃなくて
ありのままの自分でいれば
あなたが自分を大切にできないのは、
あなたのせいじゃない
あなたは、悪くない
いつだって変わることは許されてる
君はどんな君になりたかったんだろう
命は生まれたときから手にしているけれど
自分自身は
生きることでしか手に入れられない
そう思わない?
旅は続きます
大切なは  たった一つ
魂からの呼びかけにいつでも応じられるように